2章 テンカラ釣りの道具

  1. 仕掛けの概要
  2. これだけは揃えたい基本の釣り道具
  3. 竿はどんなものを選べば良いか
  4. テンカラの毛鉤はなんでもいいの真実
  5. ハリスの太さと長さ
  6. テーパーラインとレベルライン
SHIMANO TV 公式チャンネル#049 テンカラの足跡を訪ねて 大学教授 石垣尚男より引用
今日のテンカラ釣りの復権は80年代から続く先生の地道な活動によるものと断言できる

1.仕掛けの概要

仕掛けは竿、ライン、ハリス、毛鉤の4点から成る。最も一般的な仕掛けは竿と同長のラインに矢引程度のハリスを加えて毛鉤を結ぶ。
テンカラ釣りが各地方それぞれの釣法で伝承されてきたことからもわかるとおり、釣り場によって理想の仕掛けは変わる。同じ釣り場であっても釣り人のスタイルによっても違いがある。まさに十人十色のテンカラ釣りだ。
一般的な仕掛け例
「竿3.2m+ライン3.2m+ハリス1m+毛鉤」


2.これだけは揃えたい基本の釣り道具

最低限必要な道具を紹介する。テンカラ竿、ライン、ハリス、毛鉤、これだけあればテンカラ釣りは可能である。
性能の問題や使いやすさは別として、安ければ全部揃えても1万円あれば手に入る。ちょっとお酒やタバコを我慢すれば手に入る一生遊べる趣味だといえる。

3.竿はどんなものを選べば良いのか

必ずテンカラ専用の竿を選ぶ。長さは3〜4mが一般的である。
テンカラ竿の価格帯としては1万前後、2万前後、3万前後の3クラスに分けることができる。簡単にいうと長さ、軽さ、強さ、美しさが増すほどに高額になることが多い。つけ加えて極端に高い竿は塗装や装飾などに手間をかけ見た目の美しさに拘ったものも多い。テンカラ釣りは愉しむものであり見た目に拘ることへの違和感や疑問は一切無い。

では初心者にはどんなテンカラ竿がオススメできるのか。
3万前後の上級クラスまでは明らかに性能の差がある。許す限り上級クラスのものを選び、慣れないテクニックを竿でカバーしたいのが本音である。
安い竿で十分という考えは間違いではないが技術への依存度が高くなるのは事実。高価なものはそれなりに理由があり良い物だというのは事実なので仕方がない。
いつの時代も道具の開発と進化が日本の発展をささえてきたという歴史を否定することはできないのである。

どんな竿でも使いこなしてしまう名人は別として「高価なもの」に対する否定的な意見を言う人の多くには、実は高価な良い竿を使ったことが無いという人に多いように思う。食わず嫌いと似ていて「本当においしい最旬のものを食べたことが無い」に似ている。
入門用はあくまでもお試し品であり直ぐに上級クラスの竿が欲しくなるのでオススメしない。試しにやってみてからと思うなら管理釣り場やスクールで借りてみるのが良い。

初心者に竿の性能を説明するのはとても難しい。竿の調子は6:4で何本継の何グラムで、しなやかでありながらバットにパワーがあってオススメですと聞いても何もピンとこない。想像できなくて当然である。
敢えて言うなら柔らかくしなる竿の方がラインに力が伝わりやすく飛ばしやすいということ。ただ柔らかいのではなく、しなりと言われるしっかり曲って戻る反発力が求められる。それからブレない、止まる、軽い、抜ける、などの竿の評価がある。
これらの違いが分かるのであれば既に初心者ではなく、何本かの竿を手にした経験があり竿の性能や自分の好みが分かる。買う前に試し振りすれば好きな竿が見つかる。
どういう釣り方をするかによっても適した竿は変わる。大きく分けるとナチュラルドリフト派の人、誘い上げ派の人がいて、それぞれ竿選びが違う。
つまるところ初心者は何が何だかわからなすぎて価格と見た目で選ぶ以外の方法がない。それならば中クラス以上のものを選ぶのが良い。このクラスになれば性能面での不安は少なくなる。

量販店で買える安価なエサ釣り用の短竿で代用可能という記事を見るがこれはオススメしない。たしかに竿の性能が触っただけでわかる上級者は代用可能な竿を数ある中から選ぶことが出来ると思う。
しかし初心者にそれを選ぶことは困難であるし、実際に魚をかけて釣り上げるまで本当の性能はわからない。竿の評価は魚をかけるまでが半分、かけた後が半分と考えても良いくらいだ。
東京周辺の管理釣り場にはエサ竿を代用したテンカラ釣りを禁止しているところが多い。道具に制限を設けるということは、利用者増加を目指す管理釣り場にとって障害になる筈だ。
釣竿の販売店でもない管理釣り場が敢えてこういったルールを設ける訳は様々あるが、そのなかでも竿が折れることで起こる事故やトラブルの防止が主な理由の一つである。

上級者がエサ竿を改造してテンカラ竿をつくれるのは経験に基づいて使える竿を判断し、それに合わせた竿の扱い方もわかるからである。竿の扱い方にしても個人差があり同じ竿を使っても折ってしまう人もいれば折らない人もいる。
本当に誰でも代用、改造が可能ならば、テンカラ釣り人口の少ない時代にメーカーが敢えて開発費を注ぎテンカラ専用竿をつくる理由がない。
なんでも流用し合理化するのは企業として当然である。やみくもにラインナップを増やして消費を誘う手法は既に終わっている。

それでは何故テンカラ釣り専用の竿が存在するのか。そもそもエサ釣りとテンカラ釣りでは竿にかかる負荷の大きさが全くちがうのである。
テンカラ釣りは一度の釣行で何回も竿のしなりを利用して仕掛けを飛ばすことから、竿のカーボン繊維に疲れがたまり早い段階で疲労骨折する。さらにテンカラ釣りのアワセの衝撃はエサ釣りとは比較にならない程に強く、扱い方によっては一匹目の魚で無残にもアワセ折れとなる。
さらにもっと踏みこむならば、餌釣り(名人の特殊な釣法は別)とは流し方も違えばアタリの取り方がまるでちがうので竿に求めるものが違うのである。テンカラの話しだけに収まらないので割愛。

4.テンカラ釣りの毛鉤はなんでもいいの真実

よくいわれていることだが、毛鉤の精巧さに拘るフライフィッシングとはちがいテンカラ釣りの毛鉤はなんでも良いと言われている。たしかにそれで釣れる。このあたらしい考え方の広まりが近年のテンカラ釣りの普及に貢献しているのも事実である。
その証拠に雑誌やネット、各アウトドアブランドで紹介されるテンカラ釣りはそのように書かれていることが常識となっていて疑われることもない。
毛鉤はなんでも良いはいわばニュースタイルであり日本伝統の「むかしテンカラ」とはちがう「新テンカラ」の考え方なのだ。
生活のために魚を釣っていた職漁師の毛鉤がなんでも良いわけがないのである。それぞれの釣り方に合った毛鉤を日々研究していた筈である。
日本の文化継承という面においては、テンカラ釣りに使われる毛鉤は拘りぬかれた精巧なものであったと伝えるのが正しいのではないだろうか。もっとも職漁師の毛鉤を再現することは技術的に非常に高度であり材料の入手も困難であるため、現在のテンカラ釣りにおいて漁師毛鉤が使用されることは稀である。

もうひとついわれていることに毛鉤は1種類で十分という考え方がある。たしかに熟練のテンカラ釣り師は1種類の毛鉤を巧みに操りそれを可能にする技術がある。
しかし初心者のテンカラ釣りに巧みな毛鉤の操りは不可能であり、それをカバーするのが毛鉤のバリエーションではないだろうか。
実は熟練のテンカラ釣り師もほとんど例外なく数種類の毛鉤を備えている。1種類で十分ではなく、1種類でもなんとかなると表現するほうが初心者にとっては適切である。
むかしの職漁師もそうであったように毛鉤はいくつかの種類を備える必要がある。地域、川、季節、ポイント、水量、時間などの様々な要因が絡むテンカラ釣りにおいて、そのタイミングでの適切な毛鉤があるということは事実である。
最低でも大きさの大小くらいは用意したい。毛鉤を選ぶのもまたテンカラ釣りの愉しみの一つである。

5.ハリスの太さと長さ

ハリスの太さと長さは基本的に0.8号を矢引き1m位である。素材はナイロンとフロロカーボンの2種類がある。それぞれ特性があり、ナイロンは軽くて柔らかくフロロカーボンは重くて硬い。その特性を考えて適時太さと長さを使い分ける。ハリスを見直しただけで急に釣れるようになったというのは良くある話でここにもテンカラの面白さがある。

6.テーパーラインとレベルライン

テンカラ釣りは毛鉤を飛ばすためにラインの重みを利用する。言い換えれば、竿を振ってラインを飛ばし先端に結んだ毛鉤をポイントに届けるということ。
テンカラ釣りに使われるラインには、古くは馬の尻尾を撚り合わせて作られた撚り糸というものがある。武士などの裕福な身分のものたちは蚕からつくる透明度の高い本テグスを素材にした可能性もある。司馬遼太郎の「この国のかたち」によれば秀吉の時代には本テグスが存在したということからの筆者の推測である。
馬の毛や本テグスはさすがに手に入らないがナイロンでつくった昔ながらの撚り糸を使って愉しむことは心も毛鉤も踊るのではないだろうか。

テンカラ釣りで使用されるラインは、一本の素材からなる単糸と複数本の素材からなる組糸に分かれる。さらに単糸には「レベルライン」「単糸テーパーライン」があり、組糸には「撚り糸テーパーライン」がある。
ここでは「撚り糸テーパーライン」と「レベルライン」の2種類のラインについて紹介する。
つけ加えてレベルとは元から先端まで一定の太さのことで、テーパーとは元から先端にかけて徐々に細くなっていることである。

撚り糸テーパーラインの特徴

a.まず重さがあるので圧倒的によく飛ぶ。レベルラインのように釣り人のテクニックや竿の良し悪しに影響されることも少なく飛ぶ。もちろん良い竿を使うとさらに飛ぶ。

b.ピンポイントを狙うのに適している。テンカラ釣りは狙った場所に毛鉤を飛ばすことが一番重要であるといわれている。

c.重み、回転、独特の伸縮がある。これらは操作性を飛躍的に向上させるためキャスト後の流すレーン修正が容易になる。特にテンカラ釣り独特の誘いの操作については重みのあるラインが適している。

d.伸縮性は細いハリスの糸切れ防止効果を生む。特にアワセ切れが激減する。
前述したとおりハリスの選択とセッティングは非常に重要であり、敢えていうならハリスの選択の幅を広げてくれるのが撚り糸テーパーラインの優位性である。

e.伸縮性により、魚が無駄に暴れずいなすことが出来るためバラしが少ない。試しに伸びない糸に鉤をつけて生きた魚をぶら下げてみてほしい。力がバウンドしすぐに鉤から外れる。同じように伸縮するゴム糸で試してみてほしい。バウンドする力をゴム糸が吸収し、さらには鉤が魚の動きに合わせてついていくのでなかなか外れないのである。先調子などの硬い竿をつかうとバラし易いのと似ている。

f.ゆっくり竿を振りラインを飛ばすことが可能である。やさしく振って毛鉤をポイントに置いてくるイメージである。ビュッビュッと竿とラインが風切り音を立てるくらい早く強く竿を振ると、どんなに慎重にアプローチしても魚は警戒する。魚との距離が近い沢テンカラでは尚更のこと。誰もがビシッと振りたいと思うがキャスティングはパフォーマンスではない。一連の動作は最小かつ静かにそっと行うのが理想だ。
竿とラインが1対1ほどの長さであれば極端な話、振らなくても12時の位置から前に倒すだけで飛ばせる。

以上に加えて、現在ほとんどの方がレベルラインを愛用されているのは周知の事実であるが、その方たちから撚り糸テーパーラインに対する疑問が筆者のところに寄せられることがある。「撚り糸テーパーラインは太くて重いから飛ぶ」世の中にはそのくらいの見解しか発表されていないので誤解を生むのだと思う。
撚り糸テーパーラインへの誤解が生じていることは不本意である為、一つ独自の研究結果を発表させていただく。それは未だ誰も発表していない撚り糸テーパーラインについての「重要な秘密」である。

撚り糸テーパーラインの最大のミソは、その特殊な構造によって生じるジャイロ効果(わかりやすくドリル回転)にあり、それは直進安定性を飛躍的に向上させ遠くのポイントまで鋭く正確に飛ばすことを可能とする。
つまり、ラインがキャストされた後に生じる進行方向に対しての張力が撚り糸テーパーラインの自転(ジャイロ回転)を生み出す。このとき生じた横軸回転が、ライフル銃でいう銃弾のライフリング同様に、空気抵抗を受けずに長距離を正確に狙うことを可能とするのである。
物体が空中を飛行するときに空気抵抗との関係性は避けて通れない。撚り糸テーパーラインはレベルラインよりも太いので風に弱い、空気抵抗に負ける等の意見もあるが、回転、張力、摩擦、重量、等を無視した誤解である。
例えばルアーフィッシングでは細いラインの方が飛ぶというのが常識だが、リールからガイドを通して結ばれたルアーを飛ばすのと、テンカラでラインを飛ばすのは似て異なる。

それからオツリ現象に関していえば、たしかにレベルラインよりも重いのでオツリがくる。「これは撚り糸テーパーラインの最大の弱点である」そんな風にしか認知されていないのはとても残念である。
実はオツリを利用した釣技があるということを忘れてはならない。これを筆者は「扇落し」と名付けている。もちろんオツリを抑える方法もある。
他にもいろいろとあるのだが、初心者の方に読みにくい内容になるので割愛させていただく。

レベルラインの特徴

a.なんといってもコストパフォーマンスに優れている。30m巻きを買えば4mの仕掛けを7本は作れる。現在はテンカラ釣りの主流のラインとなっていてどこの釣具屋でも手に入りやすい。

b.太さ、色などのバリエーションが豊富にある。テンカラ釣りはラインを見る釣りでもあるためピンク、オレンジ、イエロー、グリーンなどの色があり視認性に優れているということは有利に働く。

c.単糸であるが故に多少乱暴に扱ってもライントラブルが少ない。反対に撚り糸は無理に引っ張ると撚りが戻って絡まるリスクがある。

d.細く軽いのでフライフィッシングのテクニックでもあるナチュラルドリフトに近づくことができる。水面一本勝負のドライテンカラならレベルラインやフライラインが良いだろう。

e.風に弱い。初心者がはじめてのテンカラ釣りの日に万が一強い風が吹いている場合は、非常に難しい釣りになる。毛鉤はなかなか前に飛ばない。ティッシュペーパーを風に向かって投げても押し戻されて前に飛ばないのと同じような状態になる。

どちらを選んで使っても釣れるのだが

どちらでもいいというのはこれから何かをはじめる初心者にとってあまりほしくない回答だ。それでは筆者がおすすめするラインはどちらなのだろうか。
それは一瞬の迷いもなく撚り糸テーパーラインだ。飛ばし易いだけでなく、ラインを操作し誘いなどの応用技術を駆使した色々な釣り方が愉しめるからである。
毛鉤を自然に流して魚を待つ釣りから、あれやこれや操作して魚を引き出す攻めの釣りへすすむとテンカラ釣りはもっと愉しくなる。

なんの知識も技術もない初心者に2本のテンカラ竿を渡す。1本には撚り糸テーパーラインに毛鉤を結んだもの。もう片方にはレベルラインに毛鉤を結んだもの。
その2本を自由に振り、制限時間内に5mほど離れた場所に置いた茶碗大の的に毛鉤を当ててもらう。だれもコツを教えない中では自らの運動神経と感覚が頼りだ。
最初は両方の竿を使って毛鉤を飛ばしてみるが数回竿を振ると何かを感じ取り、より可能性の高い方を使うようになる。それは「撚り糸テーパーライン」を結んだ竿でありこのことは実験済みである。

レベルラインが飛ばないのかと言えばそうではない。ただ初心者にはそれなりに難しいということだ。その証拠にレベルラインには枕詞が付き纏う。
「慣れれば」レベルラインは飛ぶ。
今日テンカラ釣りをはじめて、今日のうちに結果を出したいという忙しい方にはオススメできないのである。

これまで些かテーパーラインに偏った見解を述べてきたが、それはレベルラインの素晴らしさが強調されるのと同様に、筆者も撚り糸テーパーラインの素晴らしさを強調したいと思ったからである。決してレベルラインに対する否定や嫉妬で書き残す意図ではないということをご理解いただきたい。
あくまでも「初心者」がはじめての一匹を釣るためには、こういった理由で撚り糸テーパーラインが扱いやすいのではないかという筆者の持論である。

忘れてはならないのは、今日のテンカラ釣りの存在はレベルラインとそれに適した竿の進化、よりシンプルで易しい釣り方の確立と発表があったからこそである。
それは石垣尚男教授の長年にわたるテンカラ釣りへの愛情と尽力の賜物に他ならないのである。


3章 テンカラ釣りの服装と装備へつづく

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